俺様当主の花嫁教育
頬を赤らめたまま、高揚感を全身で表すエリカちゃんをグイグイと強引に引っ張って、西郷さんはかなり不機嫌な様子で茶室を後にした。
そんな二人を複雑な思いで見送る私の隣で、御影さんがフウッと息を吐いた。


「……やれやれ」


中に戻って行く御影さんの背中に向き直って、私は、ごめんなさい、と謝った。
私の謝罪が意外だったのか、御影さんはゆっくりと振り返る。


「なんだ? いきなり」

「……私、エリカちゃんに敵いませんでした」


ポツリと呟くと、御影さんがゆっくり私を振り返った。


「こんなんじゃ、西郷さんを悔しがらせる着物美人になんて、なれませんよね」


卑屈な言い方になってるのは自覚していた。
それでも、全く見向きもされない上に失笑されたのは屈辱だ。


悔しいけれど、じわっと涙が浮かんで来る。
それを誤魔化すように、私はそっぽを向いた。


これまで頑張って来たけれど、やっぱり私は大和撫子には程遠い。
それを実感しただけのお茶会だった。


「……そうか? 志麻が気付かなかっただけだろ」


御影さんは小さく肩を竦めて、クスッと笑った。


「アイツ、席入りした途端、お前を見てたぞ」


御影さんらしくない、残念な弟子をフォローするような気遣い。


――だけど、違う。
そんなの全然嬉しくない。
私は西郷さんなんかどうでもよくて……。


黙ったまま唇を噛んで、プイッとそっぽを向いた。
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