恋がしたい。ただ恋がしたい。
裕介くんの寝室へ入るのは初めてだった。
プライベートな空間には入らない。お互いに伝え合わなくても、自然とそうしていた。
正面にはベッド、西側の窓際にはデスクと、その横に本棚がある。
余計なものは殆ど置かれていない、シンプルな部屋だった。
そこまで見渡した所で抱きすくめられ、そのまま正面にあるベッドへと押し倒された。
再び唇が重なり、裕介くんの長い指がひと纏めにした髪をゆっくりとほどいていく。
それが、まるで頑なで意地っ張りな自分の心を解していくように思えて、その優しい指先にすがるように手を伸ばした。
…指先に触れたい。
…もっと触れたい。
だから…私にも触れて。
…もっと…もっと、奥まで求めて。
…心も身体も…触れたくて、触れて欲しくてたまらない。
衝動に任せるまま熱を移し合うように身体に触れて、熱くなった指を絡め合うと、重なり合った身体がさらに昂っていく。
「んっ…ゆう…っ、あんっ……あっ、あっ…」
「…はぁっ…かおり、ちゃん…っ」
抱き合って、ゆさぶられる度にどうしようもないほど切ない気持ちが溢れだして来る。
…きっと、裕介くんは知らない。
あなたがこうして私に友情を感じなくなる日を…
理性なんてどこかに吹き飛ばして異性として求めてくれるこの時を…
私が待ち望んでいたなんて知ったら、どう思うだろう。
信じられないと、
あり得ないと、
そんな訳無いと誤魔化し続けてきたけど、もう限界だった。
ずっと前からこの手の温もりに、ささくれなど一つも無いしっとりとしたその感触に、しなやかな指先の形に…
どうしようもなく心を揺さぶられて…
その度に欲情してしまっていたなんて…
優しいあなたには、絶対に知られたくない。