恋がしたい。ただ恋がしたい。

**


***

パタパタ…パタパタ…

軽いまどろみの中で、雨が窓に叩きつけられる音を聞いた。


あぁ…今日は雨か…日曜日なのにもったいないな…。

このまま部屋(ここ)で、もう少しだけうとうとしようかな…。


そう思って寝返りをうった所で、いつもとは違った枕の感触と香りを感じて、一気に脳が覚醒した。


「まずっ…っ、あっ、痛っ…。」


カバッと勢い良く身体を起こそうとした途端、頭がズキリと痛み、思わず顔をしかめた。


あのまま寝ちゃったんだ…


早く戻らないと…


心では早くしなきゃと思っているのに、身体が付いていかない。


ガチャン、バタン。パタパタ…


焦ってもがく私の耳に、リビングの扉が開く音が聞こえてきた。


どうしよう。間に合わなかった。


パタパタ…足音が近づいてくる。


ドアが開く瞬間、枕に頭を戻して咄嗟に寝ているふりをしてしまった。


「えっ…。」


驚いたような裕介くんの声が聞こえた。まさかここに私がいるなんて思ってなかったのだろう。



「…香織ちゃーん。…寝てるの?」



問いかけているのに、起こさないくらいの押さえた声量で話しかけてくる。


目を開けなくちゃ。


そう思うのに、気まずくて、何て言ったらいいのかも分からなくて、目を開けられない。

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