恋がしたい。ただ恋がしたい。
「あっ、そうだ。奏一くんに純くんの家に行く前にウチの店に寄ってって言われて行ったら、これを渡されたんだよね。」
裕介くんは後部座席から銀色の星が散りばめられた白いケーキの箱を持ち上げて、私の膝にポン、と乗せた。
「……ケーキ?」
「見ていいよ。僕もまだ見てないから。」
箱を開けると、4号くらいの小さなザッハトルテが入っていた。
「『崎山に渡して。ロールケーキを食べないうちにお前、連れて帰るだろ。』って奏一くんは言ってたけど。」
「……ほんと、何もかもお見通しで腹が立つわね。じゃあ、これが私へのお詫びって事か。裕介くんにも働いてもらって悪い事したな、って言ってたよ。」
「志帆さんにはお世話になったから恩を返しただけだよ。まだまだ返しきれてないけどね……って、何赤くなってるの?」
……それは、もちろん『崎山も今のタイミングだったら、子ども同士も同級生になれるけど、どうする?』って言われた事を思い出したからだけど。
裕介くんはふーん、と短く言った後で、少しだけニヤリとした笑みを見せた。
「せっかくのお休みだしどこか寄ろうと思ったけど、ケーキももらっちゃったし、今日はこのまま帰ろうね。……どうして奏一くんの話をしただけで真っ赤になっちゃったのかも気になるから、じっくり聞かせてもらいたいしね。」
「あっ、あと木村に隙を見せたお仕置きもしなくちゃね、うん。」