恋がしたい。ただ恋がしたい。
裕介くんは、まるでビターチョコレートみたいだ。
純くんとの初恋の記憶は、今でも思い出すだけで条件反射のように胸がチクリと痛む。
純くんとの縁は、裕介くんと一緒にいる限り切れる事は無いし、過去の記憶はこれからも私達の前に何度も姿を現して来るのかもしれない。
だけど、裕介くんは、その苦い想いも記憶も全て包み込んで受け入れてくれる。そしてとびきり優しくて甘い愛情を与えてくれる。
その蕩けるような愛に包まれる、二人きりの時だけ、裕介くんの前だけでは、私は素直で可愛い女(ひと)になれる。
***
マンションに戻って玄関に入ると、すぐに「おいでよ。」と手を差し出された。
「うん。」と笑顔を返して、裕介くんの長い綺麗な指先に自分の指先を重ねた。
やっと触れあえた。指先だけでも重なりあったこの瞬間に、愛しさが込み上げる。
「それじゃ、思う存分相性を確め合いましょうか。」
そう言って笑った佑介くんの顔は、いつものニコニコ、キラキラとしたお客さんに見せる笑顔でも、優しい笑顔でもなく、いたずらが成功した子どものような、ちょっとあどけない笑顔だった。
佑介くんのこんな笑顔だって、私しか知らないんだよね。
何度も何度も新しい顔を知って、心を見せ合って、その度に私達は恋をしていくんだろう。