恋がしたい。ただ恋がしたい。

私をじっと見つめているその切れ長な瞳は紫と似ているけど、裕介くんのほうが幾分艶っぽい。


たぶんさっぱりとした性格の紫と違って、穏やかな性格の裕介くんだから、そう見えるんだろうけど。


でも姿形は決して柔和ではなくて、すっきり通った鼻筋や薄めで整った形の唇、顎から首筋にかけてのラインはシャープで十分男らしさを感じさせる。


紫と三人でいる時なんかは、平凡な容姿の自分と見比べて落ち込む事もあるんだけど…


それでも見目麗しい二人と友達だっていうのは私の密かな自慢でもある。


さっきだって待ち合わせをした羽浦駅前で、周りの女の子達がチラチラと裕介くんを盗み見ている中、「お待たせー。」と駆け寄って行くのはなかなか気分が良かった。


まぁ…


『あれが彼女!?』


『えー、ないない。ありえない!!』


っていうあからさまな視線には、気がつかないフリをしたけどね。


私は彼女じゃないから何を言われても平気だし、優越感に浸れるからいいんだけど…


裕介くんの彼女は大変だろうな、って思う。



「…香織ちゃん、何ぼんやりしてるの?」


「んー。裕介くんの彼女は大変だなって思って。」


「えぇ?何それ。そんなのいないよ」


「いないの?今日だって駅前にいた女の子たち、みんな裕介くんの事見てたよ?お店でもキャーキャー言われちゃってるんじゃない?」


「誰も僕の事なんて見てないって。みんなご飯食べに来てるんだから」


「確かにディナータイムは声かけにくいか…じゃあランチの時は?『彼女いるんですか?』なんてしょっちゅう聞かれるでしょ?」


「そんなに聞かれないよ。確かに聞かれた事はあるけど…それくらい挨拶みたいなもんでしょ?」

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