モノノケWANTED
プロローグ
薄暗い森に、ぽつぽつと黒い雨が振り始めた。


その中に、倒れているおれと、そのおれを抱きかかえる灰夜(はる)とそのおれたちを泣きながら見つめている佐為(さい)がいた。


「うっ…くっ…。主…死んじゃやだっ…!」


雨でぐしゃぐしゃになった地面にひざと手をつき、佐為が言った。


おれはぼやける視界の中、震える手を伸ばして佐為の頬に触れた。


「佐為…悪いな…珀栄堂と…お前らを守るって言ったのに…な…」


「喋るなカゲ。死ぬぞ」


おれを抱く灰夜が腕の力を強めて言う。


その灰夜の腕を握り返す力は残っていない。そんなおれが死ぬのは目に見えている。


「灰夜…佐為…生まれ変わってもまた会えたら…珀栄堂を…復活させ…ような…」


「主…!そんな今死んじゃうようなこと言わないで!」


佐為が叫ぶ。でもおれの目はもうほとんど見えていなかった。


愛する灰夜と佐為の顔を見ることだってままならない…。


唇も動かなくなった。


その瞬間おれの意識は遠のいた。


灰夜と佐為の泣き叫ぶ声だけが、森の中にこだました。
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