愛憎コントラスト
□苦い記憶




まだ雪は降っていないけれど、寒さが辛いこの時期は、私にとっては苦しい時期。


かじかむ手をポケットに入れて、思わず背を丸くして歩いてしまう。


マフラーをしていても顔が隠れないのだから、あまり意味無いなぁなんてことを思いつつ、早足で学校へと向かうと、



「りっちゃーん!」


そんな私の名前を呼ぶ可愛らしい声が後ろから聞こえて、思わず立ち止まった。


後ろを振り向けば、鼻を赤くして小さく走ってくる女の子の姿が見える。


そんな彼女を見て、思わずふふっと笑ってしまうと、それに気付いた彼女が少し眉を下げて心配そうに見つめる。


何でもないよ、と言えば安心して笑うから、それを見て私も安心する。



「おはよ、桃香」


「おはようりっちゃん!今日も寒いよね」


「そうだね。昨日はまだマシだったのに」



そう言うと、隣でうんうんと何度も頷いて同意する彼女の姿は、小動物のよう。




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