好きも嫌いも冷静に

「馬鹿って…」

「馬鹿よ、大馬鹿。はぁ…どこまで冷静に考えてるのよ…。あんたってホント…本気の恋が下手くそなのね。用なんてなくていいの。用もなく来てくれるのが嬉しいんじゃないの。つべこべ言わず行けばいいのよ」

「鬱陶しくないのか?」

「もう…、だから何言ってるの?あんたは…。今までどんな恋愛をしてきたのよ…」

「…求められるままに」

「はあ?そんなの恋愛じゃないわ。奉仕よ奉仕。…自分から本気で好きになった事ないんじゃないの?…。
まあ、伊織の場合、その容姿じゃ仕方ないか…。放っとかないもんね、女の方が…。
肉食じゃなくても、向こうから来るから、…大変よね。本質が解らなくなるわ、自分の心の所在がね。…ある意味、可哀相だわね」

「俺…」

「何も考えずに行動すればいいのよ。衝動よ、衝動。両思いなんだから、ね?
澪さんだって、会いたいと思ってるはずよ?
このまま避けられてるんじゃないかと、不安にさせてもいいの?悲しませていいの?
大切なんでしょ?澪さんの事」

「ああ。…目茶苦茶、愛おしいと思ってる」

「いや〜ん、伊織~。素敵!素敵じゃない。ちゃんと恋してるじゃない」

握った両手をそのまま胸に持っていかれた…。

「今から行きなさい。時間が遅いとか気にせず、…行きなさいよ?
連絡なんかしないでいいから、ね?
突然がいいものなのよ。あ、そうだ、手土産を用意してあげるから。そしたら行きやすいでしょ?英雄が持って行けって言ったって、俺のせいにすればいいだろ?」

英雄はウインクをして、待っててと出て行った。
どんだけ、俺の恋の師匠なんだ…。
英雄恐るべしだな…。
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