好きも嫌いも冷静に

「はい、お待たせ。澪さんの好きなパウンドケーキ、入れてあるから。因みにこれは環も好きなんだ。
さあ、行った、行った。
今夜は冷静になっちゃダメよ?いい?強引なくらいにね」

そう言って俺の尻を撫でた。

「ぉぉおい!」

「ジョークよ、ジョーク。いつかのお返し。
ちょっと頭を色気づかしてあげようとしたのよ。
伊織の誠実さは、時には堅いのよ。
じゃあ、ヤって来い」

「バ、バカ、そんな…、あからさまにヤってとか言うな…、英雄。そんなんじゃないから…」

「いいから、い、い、か、ら。解ってる。そんなんじゃなくてもそうなの。
誰も聞いてないから。
じゃあね…、伊織。頑張れ」

頑張れって言われるのもな…。なんだかなぁ。ったく…。

「頭で考えちゃダメよ」

「…行ってくる」

「行ってらっしゃ〜い。健闘を祈ってるわ」

手を振るから、軽く上げるだけの合図を返した。
ふぅ。何だかんだ言っても、いい奴だな、英雄。
大家さんのいう通りだ。
大きくて愛情があって、…いい男だ。
俺が女なら、断然英雄に惚れてるな。ハハ、…女じゃなくて良かったな。別れる不安がない。一生な。
ずっといい関係でいられるだろう。
有難う、英雄。
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