好きも嫌いも冷静に

・ともみ


コンコンコン。

「澪さ〜ん」

「は…い」

「そろそろ行きましょうか?」

「あ、いけない、少し待って頂けますか?」

上着を取りに中へ戻った。

「はい、待ってますよ」

「ごめんなさい、お待たせしました」

「じゃあ、行きましょうか」

「はい…」

澪さんの手を取ってコートのポケットに入れた。

「今日は寒いですから」

「はい…」

ポケットの中では手を繋いでいた。
本屋さんに行くと言うので、私も一緒に行くことにした。
出掛ける時は手を繋ぐ。
伊織さんがしたかった事だと言った。
…勿論、私は嬉しいから大歓迎。当たり前のように手を取ってくれる仕草が、エスコートされているようで少し気恥ずかしいが、それも嬉しかった。
…優しくされる事に慣れたりせず、いつまでもこのドキドキを大切にしたいと思った。

少し斜め後ろを歩いた。私はこの位置関係が好き。横に並ぶより少し後ろ。

「伊織さん?今日は何を買うんですか?」

「…う〜ん…。いつものビジネス関連の雑誌…かな?」

「そうなんですね」

「澪さんは?」

「…う〜ん…。料理本…かな?」

「…」「…」

どうやら互いに何かありそう…。


あっ、あの人!
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