好きも嫌いも冷静に
区切りとは…

・すみれちゃん


「すみれちゃん、話しておきたい事がある。ちょっといいか?」

「?。はい、マスター。何ですか」

「…こんな事、俺がいちいち関わることではないかも知れないが…。これからも変わらず、ここで働いてもらいたいと思っているから、敢えて言うけど…伊織の事は…」

「大丈夫です」

「すみれちゃん…どう、大丈夫なんだ?」

「最初から…、無理な人だって、…解ってますから。騒いでいたけど…憧れです。…だから、大丈夫です」

「…伊織には大事な人が出来たんだ。これからも伊織は店に来てくれる。…一緒に来る事もあるだろう。…二人で居るところを見ても大丈夫だと言えるか?」

「大丈夫です」

「強がりじゃなく、そう言い切れるか?」

「はい。…初めて、見掛けた時から、…憧れの、…素敵な憧れの人ですから。…これからも、それは変わりません…。そんな人ですから」

「すみれちゃん…」

俺はいじらしい様子のすみれちゃんが本当の妹のようで、…思わず抱きしめた。

「偉いぞ。…大人だな。すみれちゃんは、まだ若いんだから、伊織に囚われてはいけないよ?
いい男なんて、目を向けたら、いっくらでも、居るから。伊織は忘れなさい」

「…マスター。大丈夫。会っても今まで通り…、大丈夫です。素敵な人は、…目の保養ですから」

「そうよ!すみれちゃん。伊織はね、目の保養よ。俺も大好きだもの!」

「………マスター」

マスターも失恋?…違うよね…。マスター、知らないですよね?…私の本当の気持ちは、…マスターにあるんですよ?…。
例え慰める為だったとはいえ、抱きしめてくれた…嬉しかった、このことは一生…忘れないです。
< 109 / 159 >

この作品をシェア

pagetop