好きも嫌いも冷静に

「れ、澪さ〜ん」

「伊織さん、もういいのですか?」

「ハァ、ハァ、は、い。もう、ハァ、すみましたよ。ともみちゃんが、澪さんに、時間をくれて有難うございましたって、伝えて欲しいって、ハァ、…確かに、伝えましたよ」

「はい、承りました。
ともみさんでしたっけ、…初めてお会いしましたが、感じの良い人ですね」

「そうでしょ?何か、伝わりますよね、感じの良さ」

「…はい」

「澪さん、でも、…どうしてこんな事を」

「…私達が近づくずっと前から、彼女は貴方を捉えていましたから。真っ直ぐで純粋な目で、貴方だけを見ていました。キラキラした少女マンガのような目で。…恋している目でしたから」

「俺は気が付かなかったなぁ…」

「それは…、伊織さんは、…私の方を、後ろばかり気にして歩いていたからです」

鈍感なのも罪、会っていきなり名前を呼ぶのも罪ですよ?…。覚えていてくれた、記憶にあったってこと、どれだけ嬉しいことか…。
貴方は気がついていないでしょうけど。全ての無意識の優しさも、…罪です。

「ともみさんは…、私と居るところを見て、それだけでも衝撃が走ったと思います。見ただけでは断定ではありません。…想定して、色々考えてしまうのです。
真実が解らないまま、あやふやに傷付いてしまいます。
…私はある意味、残酷な事をしたのです。二人きりにしたら、…私達の事、…話さざるを得なくなるから」
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