好きも嫌いも冷静に

「あ、上手に出来てる。でも、これでは…証拠としては弱いです。実際、高城さんが作ったかどうか解りませんし、美味しいかどうかも解りませんよね?」

「鋭い!では…、これでは?」

動画を再生し始めた。

「これで俺が作っていると解ります…どうです?」

「はい…はい。そこはクリアですね。でも味は解りません」

「う〜ん。それは実証が難しい。実際食べて頂かないと」

「フフフ、そうなりますね。面白い方ですね、高城さん。ノっていただいて、凄く楽しいです」

「いえいえ、御子柴さんこそ。まさか、こんなに気さくで楽しい方だとは…物静かな方だと、勝手にですが思っていましたから」

「…すみません。私、初対面の方とか、人となりが解らない人には、あまり自分を出さないんです。猫かぶって、いい人ぶってますから」

「あ、いや、みんなそうだと思いますよ?
最初からあまり砕けて調子がいいと、信用出来ないというか、胡散臭い感じしませんか?」

「しますします。馴れ馴れしいと言うか」

「はい、そんな感じですね少し話し込んでしまいました。すみません。
…待たせるといけない」

「え?」

高城さんの視線を辿った。
伊織さんが近くまで来ていた。問題になる前に回避ってことかしら。

「それでは、これで失礼します。貴女が腹黒い人かどうかそこまで知り得ることが出来ませんでした…機会があったら是非、俺が作った物、食べて頂きたいな」

小さく敬礼して場所を離れて行った。
え、あ、…。


「澪さん、今の人は…」

「あ、はい、お巡りさんですよ」

「あ…なるほど、…そうでしたか」

俺が来たからといって、すぐ居なくなるとは…。思いっきり、プライベートな態度、気持ち、じゃないか…。
侮れないな、お巡りさんといえども。
< 118 / 159 >

この作品をシェア

pagetop