好きも嫌いも冷静に

こんな感じで大丈夫かな。

「そうですか…。だからお店で環さんの名前が出た時、ちょっと変な空気になったんですね」

「解ってましたよね?」

「何となくですけど…。見てますから、伊織さんの事は。だから何かあるのは何となく解りました」

「あの時の話、何だか澪さんが英雄の話を遮ってくれた気がしたんだけど…、気のせいですか?」

「あれはタイミング的に偶然です」

「そう?」

「そうですよ。そんなに鋭くないですから。
えっと、それで、私の話なんですが、いいですか?
実は、すみれちゃんの事なんです。
すみれちゃん…、マスターの事が好きみたいなんです」

「…やっぱりそうでしたか。何となく、そんな気はしてました」

「伊織さんは知ってたんですか?」

「聞いた訳ではないですが。そうじゃないかと思ってただけです。
でも、英雄には確かめた事があるんですよ。二人、感じが良かったから。
でも、英雄は、すみれちゃんは妹みたいだって…。こればっかりはどうしようもない。
英雄にも長年の思い人が居た訳だし。
すみれちゃんも英雄にそんな人が居る事、知っているし」

「私も話を聞かされただけなんです。すみれちゃん、今のままでいいみたいです。
気持ちを言っても無理だからって…。伊織さんに抱く思いとは全然違うんです。
憧れじゃなく…現実の恋ですから…。切ないですね。でも、仕方ありません」

「思いは伝えちゃダメかな?…。結果は駄目だと解っていても、終わらせる事、大事だと思う、今の思い。
英雄とすみれちゃんなら、その後でも、仕事仲間としてやれそうな気がするけど。無理かな…。
まあ、どうするかは自分が決める事だから」

「そうですね。最初は辛くても、言った方がきっと後悔はしない気がします。すっきり出来るような気がします。人生、そこで終わる訳ではないですから。そのときは誰に何を言われても理解は難しいでしょうけど。
……無責任には言えませんけど」
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