好きも嫌いも冷静に

・心移ろってくれ


「いいパーティーだったわね。お客さんも快く参加してくれて、一緒に祝ってくれて。
温かくて…、いい時間だったわ。
お客さん参加型にするなんて、英雄、見直したわ」

「…そうでもないだろう」

内心誉められて喜んでるけどな。折角のパーティー、澪さんに寂しい思いをさせたくないと、伊織が決めたんだ、本当はな。

「まさか、すみれちゃんとブーケの奪い合いになるなんて…、思ってもみなかったけど」

「あ、ああ…、そうだな‥」

恐ろしい争奪戦を目の当たりにした。
俺は今日、すみれちゃんに気持ちを打ち明けられていた。…残酷だが、妹のようにしか見れないと…正直に答えた。すみれちゃんは、解ってますから大丈夫ですと、もう振っ切れたような返事をした。
…解ってますから、なんて言われると…、気持ちに区切りをつけたかった事が痛い程解るから…、すみれちゃんの気持ちが切なかった。
…何もこんな日に言わなくてもと思ったが、こんな日だからこそ、言い易かったんだろうと思った。
今まで通り、仕事では変わらず、お願いしますと言った。強いな…。強くないけど…強いな、女っていうのは。
環が澪さんのドレス姿を羨ましそうに見てるように見えたから、俺達もするか?ってさりげなく探ったら、嫌よ、と言った。
はぁ、仕方ない…。

「俺が見たいんだ、環のウエディングドレス姿。綺麗だろうなぁ」

なんて言ってみた。

「…もう、しようがないわね。
…写真くらいなら、一緒に撮ってあげてもいいわよ?」

どうやらまんざらでもなさそうだ。
じゃあ、そうするか?と聞くと、いいわよ、と言った。

おっしゃ!
何となくだけど、いい方向に進めて行けてる気がする。
こうして徐々に外堀から埋めて行けば…その先、もしかしたら進めるかも知れない。
気まぐれだから気が変わらない内にしないとだな…。
環は形に縛られたくないだろうから、…勿論、今の関係のままでも、全然構わないけどな。
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