好きも嫌いも冷静に

私も、勿論伊織さんも、入籍するだけでいいと話していたのに…。
エンゲージリングだっていらない。
式の事だって…、ウエディングパーティーの事だって…。知らない。
どうして…。…伊織さん、どうして…。こんなに。

「…英雄も喜んでて、パーティー、やらせてくれって、アイツから言ってきてくれたんだよ?
ごめんね、何もかも勝手に進めて…。
ごめん…、澪。俺…、泣かせてばかりだね」

穏やかな顔で、伊織さんが頭を撫でた。
嬉しすぎて涙が止まらない。

「う、うっ、うぅ、うわ〜ん。駄目なんかじゃない。うわ〜ん、う、う、嬉し過ぎて…」

伊織さんの気持ちは凄くよく解った。私に気を遣わせないように。
私には身内が居ないから。だから、こんな形で… 内緒に、そっと決めてくれたんだ。

「澪は泣くと子供みたいだな…」

膝の上に向き合うように座らされた。
真っ直ぐ見詰められた。これだけで、もうドキドキが止まらない。

「澪…」

その声に、何度となく、ときめいてきた。
涙を拭いながら、一度…二度、…口づけられた。
両手で顔を包み込むようにして唇を食む。甘くて…、幸せ過ぎて…溶けてしまいそう。

「澪…」

このまま…もっと、このままって…願ってしまう。

「澪」

抱きしめられた。離さないで…。
伊織さんは私にずっとドキドキをくれる。
私も抱きしめた。

「澪…、ドキドキします。貴女は俺をドキドキさせます。話は終わりました‥。
…もう一度、押し倒してくれますか?」
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