好きも嫌いも冷静に

・佐蔵 環?


「すまん、美作。ちょっといいか?頼みがあるんだ」

もう、嫌な予感しかしないんだけど…。

「はい、課長、…何でしょうか?」

課長が背の高い俺の肩に、掴まるように手を掛けてきた。見るからに怪しげな茶封筒を持っている。声を潜めて話し始めた。

「今度の日曜、暇か?」

暇だとは返事したくなかったが仕方ない。

「日曜?はあ、まだ特に予定はありませんが…」

「だったら空けといてくれ。昼前から1、2時間くらい。頼む」

「あの、何でしょうか?変な含みを持たず…、肝心な部分、まだ聞いて無いんですが…」

「おう、すまん、すまん。実はな、見合いだ!」

バシバシと叩いているつもるだろうが、子供をあやす程度にしか感じられなかった。

「はあ?お見合い?…ですか?…」

「ああ、見合いだ。取引先の部長の紹介でな…、先方が是非にと言ってるそうなんだ」

「しかし、…そんな」

見合いなんて。

「まあまあ。急な事で戸惑う気持ちは良く解る。してくれるだけでいいから。それで取引先の部長には義理がたつんだ。
その後の事は心配するな、上手く断るから、な?頼む、俺の顔をたててくれ」

「……」

「この中に釣書も入っている。
当日は二人だけで会うのが先方の希望らしいから。場所と時間、よく確認して遅れないようにしてくれよ。頼んだぞ」

ポンと肩を叩いて課長は席に戻っていった。
何だよ‥、まるで業務命令じゃないか…。拒否権は無いのか?…。もう行くしかないってことだろ?
はぁ、取引先って一体どこだよ…。大口のところか、きっとそうなんだろうな。
……本当なのか?…。
課長が、単にどっかの遠い親戚とかに頼まれたとかじゃないのか?…。行き遅れてる娘が居るとかどうとかって…。

はぁ…。
入っているメモを見てみた。
Wホテル、ロビーに11時、か…。
正直、面倒臭いの何物でもない。
行かなきゃダメだよな…。
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