好きも嫌いも冷静に

・俺と佐蔵さんそして英雄


可愛らしい性格の子だったな。謙虚で。
自分の気持ちに正直というか。
ああいう子をお嫁さんにもらう奴は羨ましいな。……。あ、ハハ…。二度会ったのはただの偶然。
残念ながら、もう会うことはないだろうな…。



「お、美作。戻ったか。ちょ、ちょ、ちょっといいか?」

「はい」

課長はまたスーツの上着をひきつらせながら俺の肩に腕をかけてきた。…。デジャヴュか。嫌な予感しかしない。

会議室に引っ張り込まれた。

「例の見合い話、先方に断りの連絡を入れたんだ。部長は何も気にしないでいいと言ってくれたんだよ。だから心配はいらない、会社としては。
…だけどな、…問題は此処からなんだが…。
相手の女性が、断るなら直接して欲しいと言ってるらしいんだ。難儀だよな。納得がいかないってことだな。
部長も、会わせるくらいの見合いで納得してくれるもんだと思ってたんだな。まあ、安請け合いだな。簡単に考えて、それならって口を利いたつもりらしいが、断って来たからと伝えたらそう言われたから、こっちで何とかしてくれないかって言うんだ」

「はあ」

「美作は会ったんだから、連絡先くらいは解るよな?」

「…帰り、送って行きましたから解りますよ?」

「何だ〜、おいおい。断るなんて迷惑そうに言っといて、よろしくしてるじゃないか。見合いとは別口で…実は」

「違いますよ。よろしくなんて…、誤解です。何もありません。どうせ帰るのだから、送っただけです。それに、断る事は、当日、本人にも言いました」

「何だ?そういうことなら、おかしいじゃないか‥。納得していたのに、ひっくり返してきた事になるな」
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