好きも嫌いも冷静に

会社のモノだろうか…。きっと、そう。
取り出した書類に目を通しながら、コーヒーカップに口をつけた。カップを置き、サンドイッチを片手にまた眺めている。
何気ないその一連の動作、それさえイケメンの一部分だと思う。何故、素敵な人は何をしてもスマートで素敵なんだろう…。
何でも好意的に見てしまうからよね。
だって好きだから割増しちゃうよね。はぁ…。
出るのは溜め息ばっかり。
どんだけ見てても見足りない…。
許されるなら、ずっと見ていたいくらい。会社について行っちゃおうかな、なんて。
だって、中々、出会えないもの、憧れるほど素敵な人って。
独身だよね、多分。薬指に指輪してないし…。
でも結婚してても、しない人も居るから。う〜ん、そうなると100パーセント独身とも言い切れないか…。
でも…、朝ご飯ここでしてるって事は、やっぱり独身よね。あ〜、でも、奥さんが料理好きじゃなくて…、ってパターンもあるか…。
あ、でも、そういう場合は、イケメンさんが料理が得意で作るってパターンよね。
フムフム。やっぱり独身。決まり。

カンッ。

「アタッ」

「…すみれちゃん。頭の中、何か飛びまくってるよ~…。ハートを背負った天使かしらね?」

ハハハッ…。

「うっ、…すみません」

「もう…、ホントに、この子は…。いつまで見てるの。はい、あっちのテーブル、片付けてくれるかな?」

トレイを渡された。これでコツンとされたんだ…。

「は~い、…すぐ行きます」


マスターと店員の女の子、いつもの掛け合いかな?フフ、いい雰囲気だな。
さて、そろそろ行くか…。


「ご馳走様でした」

「いつも有難うございます。いってらっしゃい、お気をつけて」

本日二度目のお見送りだな…。

「有り難うございます…行ってきます」


レジ横が直ぐドアだ。ゴリゴリのマスターがドアに手を掛け、手を振ってくれている。
その後ろに慌ててやって来た店員の女の子がひょいと顔を出した。こちらを見ながらマスターに何やら突っ掛かっているようだ。面白い二人だ。
チラッと見たら顔を伏せてしまったが…。
そう言えば…、あの子にちゃんと話し掛けたのは今日が初めてか…。
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