好きも嫌いも冷静に

・好きなモノって


いつもの事だが、例により有頂天だ。俺は単細胞だから…。
環さんも解りやすいこんな俺だから…扱い易いのかも知れないな。

閉店時間が待ち遠しかった。
すみれちゃんに環さんと会話しているところを見られ(当たり前だが)、挙げ句…キスまで見られていた。
一気に“オネエ疑惑"は払拭された。…はずだ。
キャッと小さく声をあげ、トレイで顔を隠していたから、間違いなく目撃しているはずだ。
ま、隠していたのは鼻から下だったしな…。

客注の料理を作りながら、俺は、まともに調理出来てるのか不安になった。今更だけど。
辛いモノ、甘くしてなかっただろうな…。
特に変わったクレームも無かったから、問題無かったのかな…。
それとも、このでかい男には直接言う勇気が無いだけだったのか…。
一応すみれちゃんに確認してみた。
特にいつもと変わりないと思いますよ、誰も何も言いませんから、と言った。
じゃあ、大丈夫だったのか…。
こんな、心ここにあらずで仕事した事なんか無かったぞ。
それだけ動揺していたってことだ…。心が激しく揺さぶられていた。それも…。
嬉しくて堪らないんだな…、俺。
飯は食わずに行っていいよな…。
俺の好き物、準備しておくって言ってたから。
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