好きも嫌いも冷静に
「…」
ここまで聞かされるのもな…はぁ、まあ仕方ないさ、余程気に入ったってことだから。…なのに。
「でも、断られちゃったし。無理ね…。それでも粘れると思ったけど、余計拒否されちゃった…。嫌がられちゃった。はぁ…、よく解ったわ。そんな人だから…だから、合わないんだって…。残念だけど、合わないのよね、私と美作さんでは…。違うのよね。
ただ好きでいられるだけでいい、そんな考えなら、敢えて告白する必要もないわ。それでは寂しいじゃない?先のない思いなんて…。つまらない。それを続けていけるほど…夢を見てるほど若くもない。…恋愛出来ないなんて。
お互いの持つ気質だから、無理を通そうとしても仕方ないものね…。よく考えたわ…。珍しく冷静によ?私が。
諦めない気持ちを、諦める事にした。…しつこく思わない、追いかけない事にした」
「じゃあ…」
頷いた。
「もう、美作さんの事はすっぱり諦めたわ、無理なんだもの」
「そうですか…」
それを言いに?
「英雄」
「はい…」
ドクドクしてきた。これから言われること、期待、してしまいそうになる。
「私が何故わざわざこんな事、話しに来たか解る?」
「…」
解らないと、そう答えても良かった。俺は環さんの口から答えが聞きたくて、言葉を返さず、環さんの目をジッと見詰めた。
期待通りの答えでないにしても、環さんが自分の口で言う事で、更に気持ちに踏ん切りを付けてくれるだろうと思ったから。
そして、俺もだが、環さんも踏み出してくれると。
「英雄に話しておきたかったから、私の気持ち…」
カタッと静かに立ち上がり中腰になった環さんは、手を伸ばしてきた。俺の顔を包んだ。…あ。そっと唇が触れた。た、環さん…いきなり、なに、を…。
「…英雄…、肉食だという英雄からもらった、…お返しよ」
「環さん…」
お返しって…。これ…。
「待ってるわ。お店が終わったら来れる?
英雄の好きなモノ…、準備して待ってるから」
「え…?!」
「今夜。来れる?」
「い、行きます。必ず行きます」
「フフフ、じゃあ待ってる。ご、馳、走、様。英、く、ん。…美味しかったわ」
チョコンとおでこを突いて帰って行った。
あ……。子供扱いだ。…だけど。
「オッ、シャー!!…あ、すみません。…お騒がせしました」
お客さんに頭を下げながら、そそくさとカップを片付けた。
おーし、行くぞー。何があっても絶対行くぞ。