好きも嫌いも冷静に
「ご馳走様でした。気を遣って頂き有難うございました。御飯もケーキも、凄く美味しかったです。私、マスターのファンになりました」
持ち帰りのケーキボックスを少し上げお礼を言った。
「また、いらしてください。伊織抜きで、いつでも。サービスは変わりなくしますよ?」
「はい、有難うごさいます」
「英雄、有難うな。じゃあ帰るよ」
「ああ、伊織、気をつけて帰れよ、えっと…」
「あ、澪と言います。御子柴澪です」
「じゃあ、澪さんでいいかな?澪さんも気をつけて。伊織が一緒だから大丈夫かな?」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
はあ、冷えてきたな。息が少し白くなった。
「あの、美作さん」
「ん?はい」
「有難うございました。連れ出してくれて。気を遣って頂いて、有難うございました」
「いや、そんな大それた事じゃない。あのままだと、夜が怖いんじゃないかと思って。
それに、まだ御飯も済んでない者同士。付き合ってもらっただけですよ」
「美作さんは、気遣いの出来る人ですね。人の心がよく解る人だと思います。繊細で優しい、一緒に居ると安らぐ人ですね」
「あー、誉め過ぎです。何も出ませんよ?」
「はい」
何も要らないです…。こうして居られるだけで。