好きも嫌いも冷静に


アパートに帰り着いた。

「大丈夫ですか?」

「…はい。大丈夫かと聞かれたら大丈夫ではないです。…怖いです。でも大丈夫です」

「矛盾してますね」

「でも…、そう言うしか術がありませんから」

「…」

「大丈夫じゃないと言ったら、貴方は、私と居てくれますか?」

「それは…」

「だから、…大丈夫です、では」

ドアの鍵を開けた。暗い部屋に足を踏み入れた。
閉まるはずのドアが後ろからついて来なかった。

「…え、あ」

美作さんがドアを掴み立っていた。

「ずっと起きています。何かあったら俺のところに」

首を振った。

「…何かあったら、もう貴方のところには行きたくても行けません…」

大袈裟だったかも知れない、でも状況によってはそうなってしまうかもだ。

「…。…俺の部屋に来ますか?」

「え?……でも…」

いきなり…。

「それとも…、大家さんの部屋に俺が居ましょうか?」

「あ、でも…」

心臓がさっきよりも煩くなった。

「…それは怖いですよね…俺が」

「違うんです…違うんです…そんなことは…」

怖いとは思わない。何故今そこまで言ったのか、……警戒…男として?…それを何故、意識させるようなことをわざわざ…。

「…では、どうしましょうか?」

居てほしい、…居たい。ドキドキする。

「…一緒に居てください。私の部屋で…」

「…解りました。では、一旦部屋に戻って着替えて来ます。…後で来ますから。そうですね、30分後くらいになりますが、その間は大丈夫ですか?」

「…はい」

その間も、その後も…。空き巣どころの問題じゃない。それは飛んでしまうようなこと。

「では、部屋に入ってください。あ、明かりをつけて確かめてから」

「はい」
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