好きも嫌いも冷静に
予期せぬ訪問者

・不審者?


人の恋愛を羨ましいとか、今まで思った事はなかったが、英雄の一途さ、まさに乙女のように真っ直ぐに焦がれる様子は、正直新鮮に映った。
相手には敵わないと解った上でつき合う潔さとでもいうのか、無理をしないつき合い方。
自然体でいられるということ。その上で気持ちは正直にぶつける。
やはり、お互い、合っているんだな。
互いを理解している仲だから。
つき合いが長くて、気心が知れているというのは、…良いもんだな。


店からの帰り、俺はその足で大家さんを訪ねてみようかと思った…。

アパートに帰り着いた。一階角、玄関横。部屋の明かりがカーテンを染めていた。

ドアの前で足を止めた。

ノックしようか、…ドアに近づき、握る拳が戸惑っていた。
…いや、やはり止めておこう。
勢いも必要な時もある。それは充分解ってる。
英雄との“恋愛トーク"で、今、気持ちは訳もなく高ぶっている。
ジリジリと燃えはじめたモノも、…確かにあるような気がする。
だけど、感情に流されたくない。
この判断は恋愛において良いのか悪いのか…。
今行かなければ、もしかしたら、タイミングを失う事になるかも知れない。
これは、英雄が俺にくれたチャンスかも知れないが…。
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