好きも嫌いも冷静に


ドアの辺り、何だか人の気配がした。
解らないけど…足音が止まったような…。

住人の人?それとも不審者?嫌だ…怖い。どうしよう…。
鍵は?ちゃんてしてあったよね…。解らなくなった。
玄関になるべく音を立てないように近づいた。

ほっ、良かった。鍵、掛けてあった。
…でも、明らかに人の気配は感じる。
怖い…怖いけど、スコープを覗いて見た。

あ…。
声が出そうになったから、慌てて口に掌を当てた。息を飲んだ。

美作さん…。どうして?
ドクンドクンと心臓が高鳴り始めた。

どうして…。

ゆっくり…ゆっくり、後退りしようと試みるが、思うように足がさがらなかった。
と言うより、動けなかった。
ああ…、気持ちが暴れる。抑えなくちゃ。
こんなにバクバク狼狽えるなんて。

靴とコンクリートの擦れる音がした…。
居なくなる?待って…。
ドアに手を掛けガチャガチャとチェーンを外した、鍵を開けた。
勢いよくドアを開けた。え…。誰も居なかった。

「うわっ」
(え?)

ドアの下から靴先が覗いていた。…誰?誰か居る、美作さん?誰?怖い!

「あ…あ…、うわ〜ん…ひっく、ひっく…」

「あ、あ、大家さん。俺です俺。美作です。
驚かせてしまいましたね?大丈夫ですか?」
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