最後の賭け
 お昼休み、といってもいつものようにロッカールームで十五分もかからずおにぎりを頬張っていたのだが、ユウジから電話がかかってきた。 

――今夜はうちに来ない? 真依子さん、明日お休みでしょ?――

 彼の勤めるマッサージ店は水曜が、真依子が勤める薬局は木曜と日曜日が定休日だった。

 水曜日の夜、特に予定がない限り、毎週のようにデートをしていた。

 といっても居酒屋がほとんどで、真依子のアパートにそのまま泊まりにくることは一カ月に一度くらいだ。

 もちろん今日も、居酒屋で待ち合わせていた。

 それを変更してまで、ユウジが自分の家に誘ってくるのは、珍しい。
 
――ちゃんとビールも用意しておくから。突然で真依子さん、泊まる用意とかしてないよね。ダメかな?――

 少し彼の声がくぐもった気がして、真依子は慌てて返事をする。

「ダメなわけないじゃない。九時過ぎちゃうかもしれないけど」

――そっち出る時に連絡してね。駅までお迎えに行くよ――

 素直に嬉しい。
 
 そういうわがままは、素直に嬉しいと真依子は思った。

 気合を入れて、仕事を急いで終わらせる。

 連絡した時間よりも少し早めについたつもりだったのに、すでにユウジは人ごみから少し離れたところで待っていた。

 目が合うと、彼は片手を少し上げて合図をする。

「コンビニに寄る?」

「ううん。もう済ませてきた」
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