最後の賭け
 歳ばっかり重ねて、こんなにもぶつかることに臆病になっていたなんて。

 それとも恋愛をしばらくしていなかったせいだろうか。

 真依子は、いつまでも続く愚痴を繰り広げている沙織を見つめた。

「当たって砕けろ」がモットーな彼女のように、何にでも素直にぶつかれるのが羨ましい。

 もちろん、彼女だって、砕けたらそれなりに傷つくのだろうけど。

「本当、人と付き合うのって難しい。もっと若い頃は、単純に好きとか嫌いとかで、終われたはずなのにね」

 一瞬、心の中まで沙織に見透かされたのかと思い、ドキッとした。

 彼女を見上げると、こっちはお構いなしで、もう次に注文するメニューを選んでいる。

「本当、難しいね……」

 真依子は小さな声で呟く。
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