恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「あれ……澤田くん、だっけ」

「あ、はい」

「えー! ちょっと待ってよ~……オレ忘れてて壱覚えてるってショックなんですけど~」


自分の気持ちを隠すつもりはないらしい岡田に、先輩の隣にいた友達らしき人が、岡田を覗き込んだ。


「もしかして実姫狙ってる?

だったらやめた方がいいよ。手強い彼氏がいるから」

「あ、やっぱりいるんすか~……なんとなくそんな気はしてたんですけど」

「彼氏いるかどうか聞いてから狙えばいいのに」


そう言う市川先輩の友達に、岡田は苦笑いして……それから、にっと笑った。


「彼氏がいたら諦めるとか……オレは誰か好きになる時はそんな低い次元で好きになったりしないんで。

彼氏がいても、自分が納得するまではぶつかります。……いい加減迷惑だって言われたら泣く泣く止めますけどね」


はは、と苦笑いをしながら後ろ頭をかく岡田。


真っ向勝負で、計算とか知らない岡田。

そんな岡田が……すごく眩しかった。


「……岡田くん、別にあたしの事本気じゃないでしょ?」

「あー……まぁ、ちょっと気になるなって感じです」


素直に答える岡田に、市川先輩が微笑む。

そして……


「じゃあ他の子にして。

あたしは今付き合ってる人以外と付き合う気はないから……もし好きになってもらえても岡田くんの事を恋愛対象として好きにはなれない」


気持ちを真っ直ぐに伝える岡田。

それに、きちんと応える市川先輩。


それを目の当たりにして、情けない自分が浮き彫りになる。


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