恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


香ばしい香りに、少しだけ酸味のある苦味が口に広がる。

『大人の味』


これくらいの苦味なら飲み干してやる。

飲み干してやるよ。


だけど、いちいち胸の傷に染み込むから少し時間はかかりそうだけど。


誰も知らなくていいから。

だから、せめて自分くらいは誇りに思ってもいいよな?


染みるこの傷が、名誉の負傷だって――――……




その後、オレはしばらく矢野センとくだらない会話をして家路についた。

教室には行かずに。


粘って粘って粘って……そうゆう闘い方もあるんだろうけど。

オレには出来そうもない。


せっかく本音を出した高遠と小林の間を邪魔したくない。

そりゃ、やっぱり本音を言えば悔しいし、オレだって高遠に負けないくらいに小林を好きだって思ってる。

今だって思ってる。


だけどさ。

小林は高遠が好きなんだ。

高遠だって……思わず走り出すくらいに小林を思ってる。


オレの思いは……必要ない。


だったら。

引き際は潔く。


きっと胸ん中じゃずっとずっとこの痛みを引きずり続けるだろうけど……


だけど、態度くらいは潔く。

せめて態度くらいは……明るく吹っ切ってやる。


……少しくらいカッコつけるのがちょうどいいらしいから。


それでいつか、この傷を糧にしてやる。


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