恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


けど……今、小林の頭を占めてるのはアップルパイの事で、寂しさじゃない。

それが分かっただけで、オレはいいや。


オレじゃなくて、アップルパイなのが少し癪に触るけど……まぁいいや。


小林の負けず嫌いな一面に苦笑いを浮かべながら下駄箱を出る。

岡田の散らした砂ぼこりが、夕陽に照らされて輝いていた。


 
 ※※※


「なぁ、壱」

「んー?」


オレンジに染まった帰り道、岡田がオレに呼び掛けた。

家が隣同士のオレ達は割と2人で帰る事が多い。

何を話す訳でもないけど、家族同然の岡田とはお互い気も使わないし、本当の兄弟みたいだ。

もちろん岡田が弟だけど。


「壱さ、小林が好きだろ。しかもマジで」


弟が突然言い放った言葉に、オレは言葉を失った。

……おい。今、なんて言った?


唖然としているオレに、岡田が続ける。


「何年つるんでると思ってんだよ。

他の奴が気付かない事でもオレには分かるし」

「……」


まじかよ、こいつ。


「壱が2年になってからずっと小林気にしてたのも知ってたよ」

「……まじ?」

「まじ」


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