恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「でも……矢野先生には断られちゃいました。

よっぽど大事な彼女がいるみたいで……」

「矢野先生は男気がありますからね。

……もしいいんならそれも頂けますか? 卓球部の部員で食べたいんですが」


高遠が、馬場の手に持たれていた矢野セン用のパンを指差す。

すると嬉しそうに笑った馬場は紙袋を高遠に渡した。


「ぜひもらって下さい」

「ありがとうございます」


紙袋は……そのまま高遠の手に渡った。


嬉しそうな馬場の笑顔が

和やかな2人の雰囲気が

オレの苛立ちを誘う。


この間の車の事も合わさって、オレの怒りを高めていく。
 

なんでだよ……

小林の弁当は断ったくせにそれはいいのかよ。

馬場のパンは食うのかよ。


彼女の小林も乗せた事ない助手席に、馬場は乗せるのかよ。

小林がどう思うか、考えろよ。


フォローしろよ。


小林は……友達も作れないで、それでも高遠と一緒にいたいからって1人で頑張ってんのに……

いつも1人で頑張ってんのに……



オレは手をこれ以上ないくらいキツく握り締める。

手のひらにくい込む爪が痛くて、小林の笑顔を思い出すと胸が痛くて……歯を食いしばった。




小林への想いが強いからこそ、高遠が許せなかった。


6時間目の古文が、嫌で仕方なかった。


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