セピア‐ため息の行方
  その峻甫の言葉に耳を傾けていた蛍子は
「ふーん。じゃあ壺田さんに釘を刺したのは自分があの女性と、密かにこうして隠れて付き合っていたからかもね?」


  するとその蛍子の言葉を聞いていた峻甫は


「……」


  次の言葉に詰まり複雑な表情(かお)になった。


  とこの時花梨はそう言えば『若い頃の男性は往々にして歳上の女性にあこがれる時期を経て、それから間もなくして新たにさほど自分とそう年の変わらない結婚相手と、巡り会う事も多々ある』と自分の上司に聞いた言葉を、感慨深気に思い出した……。
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