セピア‐ため息の行方
  そしてその若い刑事は一応峻甫の親元に峻甫が交通事故を引き起こし被害者が入院中である事、尚、事故の取り調べ中に峻甫自身も倒れ病院に搬送された旨などを連絡した。


  峻甫の母親冴子は峻甫が幼い頃に夫を病気で亡くしており、峻甫は都会の大学に進学をして、某会社に就職していたから、今現在は一人暮らしだった。


  そして冴子が警察署から連絡を貰ったのは、某会社で事務処理の仕事中だった。だから冴子は上司に事情を話し午後から早退させて貰い、取り敢(あ)えず身支度を整えそのまま会社から最寄りの駅に向かい、電車を乗り継ぎ東京行きの新幹線に飛び乗った。


  交通事故を起こして息子と被害者が病院に搬送されと聞き、冴子は生きた心地がしなかった。自分の夫に先立れた後は子供を心の支えとして今まで頑張ってきたのに、今度は息子までも奪われたら自分はどうしたら良いのか?と思い、冴子はただただ心の中で息子の無事を祈っていた……。
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