Rain
それから放課後、美術委員の仕事が終わり、帰ろうと教室に鞄を取りに行くと、誰もいないはずの教室に、一人だけ人の姿があった

私は、その人物が誰だか気付き、驚いて話しかけた

「三沢!?」

私の姿を見つけた三沢は力無く笑って答えた

「…本條」

そんな三沢に私は勢いよく捲し立てる

「怪我は大丈夫なの!?」

すると、三沢は相変わらず力のない笑い方をしたまま答えた。

「あぁ…日常生活は問題ないって……でもサッカーは…もう出来ないってさ」

私は、それを聞いて、何も言えなくなった




三沢は誰よりも頑張っていた

『天才』みたいに言われてたけど本当は誰よりも練習してた

だから、キャプテンにまでなれたんだ

私は、そんな三沢の事を密かに、ずっと尊敬してた

夢も何もない私にとっては、サッカー選手になるって夢のために、来る日も来る日も血の滲むような努力とハードな練習を笑ってこなす三沢が眩しかったんだ



なのに、もう2度とサッカーが出来ないなんて―――…
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