【空色の未来[海色の過去]】
side美緒




「美緒、起きろ」





ユサユサ…




「ん」




男らしい葵の手が私の肩を揺らした

もう起きないとね…

結構寝たな、
さっきから黒板見るでもなく授業を聞くでもなく私の方に視線を送り何やら観察をしてる隣の男が鬱陶しかったけどね。

私の眠りを妨げる気?

でも私は爆睡してた…

葵がいるから安全だと思うけど、流石に爆睡は隙がありすぎたな…



久しぶりに親しい人に会えると、
昨日まで一時間も寝れなかったのが嘘のようだ…


あれから私はちゃんとした睡眠は取れてない、きっとあの事があってから一度も


こりゃ重症だね…



ふと窓の外を見上げると、朝方の曇りは1つも消えて大空が広がっていた



おはよ…



空に向かって、心のなかでそう言った



空に話し掛ける私って可笑しいのかな?

でもこれは毎日無意識にやってしまうから変えようもないけどね





「みーお、一緒にお昼食べよ?」




前の席から確か夏樹?って人に声をかけられ無視しようとしたけど、腕を引っ張られ何やら何処かへ行くみたいだから強制的に拒めなかった…




キィー…ガッチャン…




「みんなー、こいつも連れてきたっ」





夏樹はまるで新しいおもちゃをもらった仔犬みたいにはしゃいでる…


顔立ちも結構イケメンだから
合っているのがちょっとした皮肉だよね


普通の女子はきっと鼻血ものだよね(笑)




だけど私は別にどうでもよかった。





「あー、その子ですね。確か美緒さんですよね?こっち来て一緒に食べませんか」




いかにも紳士のような素振りだが、私を見つめるその目は冷たく、疑惑や見透かすような、又は距離を取ろうとしているのが容易に分かる。


だから彼の傍に行き、




「貴方がどんな思いをして来たかは私には分からないけど、初めて会う人にその冷たい目を向けるのは違うんじゃない?」




彼にだけに聞こえるように小さな声で言ったから彼は笑顔を崩さず、
目は驚きで一杯って感じだった…



流石、副総長なだけあるね、

だけど目の感情表現のコントロールができていないんじゃ、まだまだだね


私はもう一度彼を見ると

彼は、少し考え事をした素振りをとり
またあの作り笑いをし





「見破られるなど初めてです。その冷静な洞察力、一般人には到底持ち合わせない能力ですね。貴方は一体何者なんですか?」





探るような目で男は見てきた

ハァ…

またこの目か…




「高橋…「名前ではなく、貴女の身元についてです。」




私の話を遮り男は聞く



二人の間に沈黙が起こった…



きっと現実では2、3分程の時間が私の感覚では永遠に思えた




「まっ、まっ、とりあえずさ飯にしようぜ。美緒ちゃんはパンとご飯どっち?」






突如横から夏樹が入り込んで右手にパン左手におにぎりを抱えて私に選ばせた…




「私はいい」




「遠慮しないでよ、皆の分あるから食べよ?」




「お腹すいてない。夏樹達先に食べちゃえば?」





そう?っていいながらまだこちらをチラチラ見てくる夏樹に構わず私は空を見上げた



もっと傍で見たかった空を、目の前一杯に見させてくれたのだから少しは夏樹に感謝しないとね…


温かい初夏の風が私を包む




私はそっと瞼を閉じて、その温もりを体全体で一杯に感じた







「おい」






心地好い感覚は隣で煙草を吹かしている総長さんによって妨げられた



「なに?」



声をかけられたことにより、顔を引き締めて男に視線を送った

この男が聞きたいことはわかってる、でも今の私じゃ全部を話す自信なんて到底ない




「俺達のこと知ってるか?」





あぁ、そっちね…





すると、さっきまで黙ってた夏樹が口を挟んだ




「恐がらないで聞いて欲しいんだ。俺達は青龍っていう暴走族で、そこで煙草を吸っているのが総長の一之瀬 響也。
さっき君が話しかけたのが副総長の高杉朔弥。それと、さっきから君を威嚇しっぱなしの速水 涼介と柴田 佳祐と情報係の黒木 祐介、それに僕は青龍の幹部なんだ」




恐る恐る夏樹は私に視線を移した…





そんなこと、言われなくても…







「知ってる…」





ここにいる全員が自分達が青龍だと言うことを私が知らないって思ってたらしい



心底驚いた様子で幹部達は見てくる


フッ…


響也は不適な笑みを浮かべ
私に向き直る





「なら、話が早い…」





響也は眼光を光らせ私に呟いた




「青龍の姫にならないか」











…この男は何をいっているの






「嫌」







私は即答した

だけど、響也は引き下がらなかった





「お前に拒否権はない、実質他の奴等はお前を姫だと思い込んでる…」




待って、どういうこと?




「他の奴等って?」




「青龍を敵対する暴走族やこの学校の生徒達のことですよ…」




眼鏡をクイッと押して朔弥は私に向き直る




「何で…」




意味が分からない、何時どういう風になればそう思えるわけ?




「お前を俺等青龍の奴等が気に入ったからだよ。」




「は?」





どこに気に入る要素があったかわかんないんだけど




「夏樹とか見てればすぐに分かるが、あれだけ青龍は女に対して結構不信感抱いていたのに、お前にだけは気を許してるんだよ。」





私は吃驚した…


響也が優しく笑ってる、そんな顔できたんだね





「要するに、貴女なら青龍の姫として迎え入れられます。」







……__、やっぱり時がたっても変わらないものがあるみたいだよ…



ここはやっぱり暖かすぎるね







「それに、今貴女が拒んでもまわりの人は貴女を姫だと思い襲ってくるかもしれません。そのための護衛も必要なのでならばいっそのこと姫になってもらえるとこちらも助かります…。」




朔弥は淡々と話を進めていくがその目はさっきより柔らかくなってる気がした



姫か…もうならないつもりだったのにな









「冗談じゃねえ!!何で女なんか青龍に加えんだよ!!俺は反対だ!!絶対無理!!」






空を見上げていたら横から怒鳴り声が聞こえてきた


速水 涼介だ…



あの目…完全に拒絶してる


私に言ってるんじゃない、私を通して誰かに言ってる…



憎しみの籠った、悲しい目…





このまま放っておいたら
きっと心が崩壊するんじゃないかな、

そのぐらい彼の目は何も移してない




これは少し話聞いた方がいいな



私は響也に顔を向けた




「ね、」



「ん」




響也は頷いて私を見つめた




「涼介と二人にさせて…」



「はぁ?無理」




怪訝な顔で私の意図を探ってる…


あーもう、鈍い…


仕方ない、賭けるしかないか







「涼介と二人で話させてくれたら姫のこと考える…」




「………。」




「それじゃダメ?」




「……考えるんじゃなくて、なれ」





そうきたか…











「分かった…………なる…。」





もう、凄い面倒臭い



響也は目で「交渉成立だな」って言ってくる


ハァ…




「屋上から出ろ。」




威圧的に一言響也が言った


あーあ、そんなんじゃ分かんないって
響也って不器用なんだね

屋上から全員が出ようとしたが




「涼介、お前は残れ」




響也は涼介に言って自分も出ていこうとした。




「響也!!女と二人なんて嫌だ!!」




あらあら可哀想に、
目に一杯涙溜めちゃって…

なんか私が悪いことしたみたいになってるんだけど

響也は背中越しから




「総長命令だ」





一言言って出てった。


てか今日初めて会った女に従って良いの?



ま、動かしてくれたからそれで良しとするか…


さてと、問題はこの目の前で泣き崩れそうなお坊ちゃんをどうにかしないとな



自分で招いたことながら不安を拭いきれない。

だけど、放っておけないのが私の悪い癖



救えるなんて思ってない…

傷を癒す事ができるなんて思ってない…



ただ目の前で苦しむ人を見ると無意識に手を伸ばしたくなるだけ


私の気紛れに少しだけ付き合ってもらうね


空は梅雨の季節のはずなのに快晴が広がっていた…
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