【空色の未来[海色の過去]】
≪第11章 夜空に咲き誇る花≫
美緒side



夏休みが始まって数十日がたち
響也とはメールはしてるけど
族関係で揉め事があって
忙しいらしくて全く会ってない

これじゃあ花火大会も
一緒に行くのは無理かな…



結構楽しみにしている自分がいるのに
ちょっぴり驚いた。



花火大会は明日…



響也、大丈夫かな…



ソワソワと鼓動が心臓を窮屈にさせた

私は寝る前に、夜空に瞬く星に向かって
明日が良い日になるように願いをかけた






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
花火大会当日…




履きなれない下駄に、葵が調達してきた綺麗な柄の水色の浴衣を着て…

髪を御団子に結いあげて…

小さな茶袋をもって…



てかバッチリ行く体勢整えちゃったね


まあ、こうして玄関を抜け出るまでには
狼牙に鬼のように行くのを止められて、
浴衣姿を見た男を処刑してやるから
全員連れてこいとか言うし…
予想以上に束縛な発言を浴びせられた…


何とか玄関を抜けられた



響也とは現地で会う事になってる



私は早速花火大会会場へと向かった…








ガヤガヤガヤ…ザワザワザワ…

会場は思った通り、
沢山の人で賑わっていた



まだかな…響也…



待ち合わせ時間はとっくに廻って
30分たっていた


遅いな、何かあったのかな…


時間がたつ度に不安が募っていく


ふと周りを見渡すと
カップルがとても多いことに気がついた



仲良いな…浴衣を二人して着てる…


(ヒロくん♪だーいすき!!)
(僕も、君に負けないくらい好きだよ♪)

(桃色のスーパーボールとれなーい…)
(仕方ないな、…ほら取れた。)
(ありがとう♪)


何気ない言葉を交わしたり二人で一緒にお祭りを楽しんでいるカップルがいた…



ハアー…



自分だけが一人ぼっちのような気がしていたたまれなくなってきた。



もう…

帰ろっかな…


私は方向転換して、足を進めた

頬から流れ落ちる生暖かい雫を拭う事もしないでゆっくり足を進めた


響也…ばか…
来てくんないじゃん…




ハァハァハァ…

ドタドタドタ…


パシッ


ハァ…ハァ…ハァ…


後ろから風をきって素早く
私の手首をつかんだのは響也だった…


黒のTシャツにシルバーのネックレス、
紺に近い黒のジーンズの格好をしていた


全速力で走ってきたのか、
肩で息をして額には汗が流れてた





「待たせて悪かった…他の族との件で時間がかかった…。」



きょう、や




私は人前なんて気にもとめず振り返って思いっきり響也に抱きついた


すると、
響也は優しく抱き締めてくれた…



「…遅いよ」

「ああ」

「寂しかった…」

「ああ」

「響也の、ばか」

「悪かった…」


寂しいのと会いたかったのと響也の温もりが暖かすぎるとで自然と涙が溢れた…



私が泣き止むまで響也はまたあの
優しくて暖かいポンポンをしてくれた。








「…なあ美緒…あの、そのな…
……………浴衣姿、綺麗だ…。」

初めて名前を呼んでくれた……
響也に呼ばれると何か嬉しい


「ありがと」


響也はいつも青龍にいる時みたいに威圧的ではなくカタコトな言葉を私に言った


フフフ

何か覚えちゃったな…

響也は照れるとすぐに口下手になる



何か可愛い…


「とりあえず、花火まで時間があるから屋台でも回るか。」

「そうだね…」


空が暗くなり始めた頃、沢山の明かりと人々で賑わった屋台の通りを見つけて私達は屋台を回ることにした。


移動するときに自然と二人の指と指が触れあい手を繋いでいた。

二人は照れ臭そうに外側に顔を背け赤い頬を隠すようにしたが御互いに繋いだ手を強く握りしめて離すことはしなかった。




「響也…わたあめ食べようよ」

「ああ、そうだな」

私は甘党なのですぐに見つけたわたあめに目が釘付けになった。

私達はひとつのわたあめを買って2人で食べることにした。

わたあめにまず私がかぶりつくと
すかさず響也が
「お前は色気より食い気だな」
ってめっちゃ笑って言ってきた。

「だって美味しいんだもん」

プンスカ怒りながらも
その甘くて美味しいわたを口にいれると
溶けるように口端が緩んでしまう…

「そんなに美味しいの?」

覗きこむように上目遣いで見てくるから
折角のわたの味も分からないまま
ゴクンってしちゃった…もったいない…

「俺にもちょうだい…」

「ダメ」

「ひとくち」

「ダメだってば」

すると、
響也は無理矢理私の手首を掴んで
私のわたを食べようとした。

もちろん簡単にやるつもりなんてない

ブンブン手首を揺さぶってやった

「あ、こら!落とす落とす!!」

「わたは私のだよ!」

「一口ぐらいよこせよ!!」

ガブッ

わっ…超無理矢理食った…!

「ちょっと~!」

「うわ!!これ超あめえ!」

「嫌なら食うな!!」






何か、楽しいかも…
久しぶりに笑ってる…私…





私達は無事にわたあめをたいらげると
また屋台を巡った…


一段と楽しそうな音楽と人々の賑わいは増していく中、ひとつの屋台の前に来た

それは、
色鮮やかなスーパーボールが水に流れてるお店…スーパーボールすくいだ…

「美緒…やるか?」

「うん」


綺麗な色とりどりとした模様をつけたボールは水流に沿ってぐるぐる回ってる

ゆっくり網を水中にいれると、スカイブルーのボールに狙いを定めて、網を持ち上げた…

だけど、
網は破れてボールは手をすり抜けて
流れていってしまった。

「あーあ、お前下手くそだな。」

ちょっと小馬鹿にした態度で私を見下ろして笑ってる響也を放っておいて
私はさっきのスカイブルーのスーパーボールの行方を追った


ヨイショッ


隣に響也がしゃがみこんできて


「あれ欲しいの?」

「……別に、欲しくない」

「あっそ…おじさん、もう一回追加!!」

屋台のおじさんに網をもらうと
響也はスーパーボールすくいをし始めた

すると、
真っ先にあのスカイブルーのボールを
すくいあげた…。





「毎度ありー。」
おじさんの優しそうな声が響く…


「ほらよ…」

響也は私の手にスカイブルーのスーパーボールが入った水袋を渡した…

いらないって言ったのに…


でも
ありがたく受けとることにした。

「…ありがと」

「ああ」


何か、今日の響也優しいな…


私は響也がくれたボールを眺めると
屋台の明かりで照らしてみた。


きらきら中の光沢が光り…
スカイブルーの色は海の模様になった


綺麗…


この時、響也は私の顔を覗いて
微笑んでたことを私は知らない…



また、歩くことにした…


「お祭りとか誰かと行ったことあるか」

少し歩くと響也は私にしか聞こえないぐらいのボリュームで話しかけてきた。

「うん…お祭りじゃないけど…海なら」

ブチッ…


突然、下駄の紐緒が切れた。


やば…切れちゃった…

お古の下駄だったので年期が入っていたから、寿命がきたみたいだった


「これじゃあ、歩けねえな…」

「どうしよ…」

響也は私の前でしゃがみこんで

「乗れ…」

私をおんぶしてくれた


恥ずかしいな…これ…


近くの神社の階段に来ると
私を丁寧に下ろしてくれた

「平気か…?」

「大丈夫」

ズキッ


「ッ…イタ」

「どうした」

履きなれない下駄をずっと無理に履いていたので紐緒が足を締め付けて擦ってしまった。

綺麗に縄の跡が足に痣となって残った。


「…見せてみろよ」

「良い…」

これじゃあ、屋台廻れないじゃん…

何やってんだよ…馬鹿…

私は何か自分がどうしようもなくお荷物にしか感じなくて、もっと響也と屋台巡って馬鹿やりたいとか思うようになっていた。

それほどまでに、響也のことを親密に感じるようになった…


だから…
自分のせいで廻れなくなるのが
情けなかった。

「いいから…見せてみろ」

威圧的だけど顔は優しい瞳で見てくる

響也は私を階段に座らせて
自分は2、3段したの方に座って
下駄で擦りむいた足を見てくれた

「これ…痛かったろ、我慢してんじゃねえよ…」

包帯なんて持ってないから響也は自分のハンカチを私の足に巻いてくれた


階段に座って屋台の並ぶ通りを上から眺めると…
それはまるで宝石のように輝いていて
心が魅せられた。

響也も私と同じように隣に座って
その眺めを一緒に堪能した


「これじゃあ、屋台廻れないね」

「何か、欲しかったのか?」

「ううん…響也とまだ廻りたかったなって思っただけ…」

「そうか…」



お祭りの流れてる音楽のせいか、人々の活気が溢れてるせいか、二人の胸の鼓動はいつもより高ぶっていた

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