【空色の未来[海色の過去]】
≪第12章 最強の男≫
響也side



俺には昔…憧れてる男が居たんだ

その男は、
俺にとって人生の目標であり
一番の理解者だった


「“だった”?」


ああ

その男は…今はもう、死んでる

バイク事故だって聞いた

「…ごめん」

良いんだよ…過ぎた事だ


その男と俺が初めて会ったのは
俺が青龍に入る前の中坊の時

俺は家族の事とか、世間からの冷めた瞳とかで情緒不安定だった…。

全てをぶち壊してしまえば
俺は楽になれる…

そんな馬鹿げた事を信じてた

そんで…
いつもと同じくヤクザと喧嘩してたら

いつもはすぐに片付けて、さっさと此処から出ていこうとしたら…

相手のヤクザが案外強くって
ぶっ倒れたんだよ…俺…




ああ…もうやべえな、死ぬんだな…俺…




今の状況からして
死ぬのを覚悟したけど…

何でかさ…
凄え、解放感はんぱなかった

やっと自由になれる…そう思えた



俺は目を閉じて、
次に来る痛みと衝撃を待った



「殺るな」


だけど…
衝撃なんて待っても来なかった

一人の威圧的な男っぽい綺麗な声が
ヤクザ達を止めた


コツコツ…コツコツ…


足音が俺に近付いてくる

ヤクザの頭かな…



「お前…何で“死”に急ぐ…」



目を開けると…
そこには綺麗な男がいた

だけど…どうでも良かった

早く…死にたかった俺にとっては
目障りにしか他無かった


「俺の居場所何て此処にはねえから…」


俺は何でか素直に言ってた


「そんなこと、誰が決めた…」


無償にこの男がムカついた


「うるせえよ!!誰も俺を必要としない…
誰も俺の存在を認識してくれねえ…
そんなとこにずっとなんていられるか!!」


俺は昔から人から避けられては
居場所なんて無けりゃ
喧嘩三昧の日々を過ごしてきた…

俺は本当の親から捨てられたから
今の親に育てて貰ったが、それ以外の愛情なんてもらった覚えはない…



ずっと孤独だった



「…死にてえよ…殺せよ……」


俺はもう何も目に色を写さなくした


男は近づいてきて、
俺の首に手をやって締め上げてきた


やっと死ねる…


「……あ、りが…と…」


俺は最後に声を振り絞って出した

男は眉間に皺を寄せて
俺を鋭く睨み付けた


「餓鬼が…一丁前に死のうとすんな…」

男は力を緩めた


ゲホッゲホッ…オホ…


「…なん…で…」


男は煙草を吸って俺に目を向けた

「お前さ…悔しくねえの?」

はあ?

「お前を苦しめた奴等に負けを認めたも同然だって言ってんだ…」


でも…俺は、こうするしかわかんねえ


「テメエ…マジで餓鬼だな…」

ムカッ

「餓鬼だから…何も出来ねえ餓鬼だから、こうすんだろうが!!」

男は俺を見下げてきた


「だったら…俺が選択させてやる…」


そう言って男は
自分が持ってた煙草を俺に近づけた


「俺の煙草で…焼き、いれてみろ…」


焼き…つまり、根性焼き…


「もし…そんな肝が据わってんなら
俺のチームに入れさしてやるよ…」

「ヤクザになんかになんかなられねよ」

「馬鹿か…俺らはヤクザじゃねえ…
“暴走族”だ…」


この男の目が言ってる
生きてえのか…死にてえのか…って


俺は…




生きてえよ




俺を認めてくれる場所でな…


俺は迷わず、男の手から煙草をとり
左手の平に押し付けた


ジュー…


クッ…


痛えけど、今までの苦痛より痛くねえ


一瞬男が驚いたかのように目を見開いてすぐに口角を少し上げた。



そのあとは眠るように俺は気絶した


眠る直前に男の声が聞こえた




「お前の生き甲斐…俺が渡してやるよ」





あれから…



本当に、俺は暴走族の一員になった。

俺が入るこの暴走族は
全国一大規模で最強の族…


“青龍”だった


しかも、あの男は
青龍十七代目総長だった…。



ピクッ…


隣に座ってる美緒が一瞬体を強張らせた


「怖くなったか?もうやめるか…。」

「大丈夫…平気…。」

この時、俺は気付けば良かった

美緒がビクついたのは族が怖いからじゃねえってことに…


総長は俺に色んな事を教えてくれた

喧嘩の仕方…

バイクの弄り方…

憧れの目と媚を売る目の違い…
又は見抜き方…


凄え人だったよ…



こんな事もあったな…

俺と同じ同級の奴が他の族に隙を狙われて殴られたとき

総長はこう言ったんだ

「隙を造るような態度とってるから狙われんだ…何時でもどんな時でも、
喧嘩できる態度とってろ…」

「クソッ…覚えてろよ…彼奴等!!
次は絶てぇ負けねえから…」

「やり返しに行こうなんて思うんじゃねえよ…!!」

「このままやられたままで、気がすむかよ!!」


俺はこの時まだ考えが餓鬼だったから
簡単には聞く耳が持てなかった…

総長の話に耳を貸さず
やられた仲間と一緒に殴り込みに行った



彼奴等は使われてない工場で
溝鼠(ドブネズミ)と同じ様に生活していた


俺達はそのまま喧嘩を始めようとしたが
相手の奴等はざっと100人は揃ってて
俺達は一瞬怯んだ…

だが決めた以上、
帰るわけにはいかず…
そのまま殴り込んだ


案の定俺達はボコボコにされた…
弱えわけじゃねえけど、
相手の人数が多すぎて
手も足も出なかった…


やべえ…ダッセー…


二度もこんな奴等に負けんのかよ…


相手の拳は容赦なく俺達を痛めつける


弱えな…俺…




マジで二度目の死を覚悟した





パリーンッ、ガッシャーン…


「この餓鬼共に手え出すんじゃねえ!」




総長は硝子を拳で殴り割り
入ってきた…


また…助けてもらえた…




「こいつ等…まだ餓鬼なんだよ…
そんぐらいで手え打ってくれねえか?」


総長は目の前の奴等を殴らなかった…


どうしてだよ…


「それは無理だなこのお子様達が
俺等に手を出しちまったお陰で数人
怪我しちまってなあ…
お詫びしてもらってんのよ…」

気色惡ぃ顔でニヤけながら
奴等のリーダーらしいデブが言った


「そうか…なら…返してもらうぜ…」


総長は俺と仲間に
「逃げんぞ!!走れ!!」
そう言ってドアを蹴り破った…


はあ?


ボコボコにしねえのかよ…


あんた、強えだろうがよ!!






ハァハァハァ…

「どこいきやがった!彼奴等!!」


どうして…


(お前ら…静かにしてろよ…)


何で…何で…


コツコツコツコツコッ…


(言ったみてえだな…)


「何で…!!ぶっ飛ばさねえんだよ!!
あんた…強えだろうが!!」

「…勝てる保証は合ったのかよ…」

はあ?

「あんた総長だろうがよ!
悔しくねえの?」

「フッ…だから餓鬼なんだよ…お前は」


「分けわかん「もし…」」

見たこともねえ殺気で
俺の話を食い止めた

「…俺が殺られてたらどうなってた?」

何も思い浮かばねえ、
総長が負けるなんて考えたこともねえ

「お前はやっぱ餓鬼だな…」

ムカッ

どうせ俺は餓鬼ですよ…



ガシッ…

総長は俺の胸ぐらを掴んだ
そして…


「俺が殺られでもしたらテメエらの
命の保証はねえつってんだ…!!」





この人は……強えよ…





あの時、
もし万が一でも総長が
負けるような事があったとしたら
俺達は本当に…明日を見ることさえ
出来なかったかもしれない



それを総長は気づいてたから
あの場であの対応が一番良かったんだ


また…総長に命救われちまうなんてな


弱え…俺…



なんか…無償に自分の弱さに
涙が溢れてきた



ウッ…ウッウッ…



クシャクシャクシャ…


「テメエはまだ餓鬼だ…
やらねえと行けねえことなんて
星の数ほどにだってある…」

総長の暖かすぎるゴツゴツした男の手が俺の頭を荒っぽく撫でてくれたから
更に俺は声をあげて泣いた…。


「俺…強くなりてえ…総長みたいに
最強の男になりてえ…!」


フー…


総長は煙草を吸いながら
天を仰ぎながら微笑んだ…

「俺を目指すのは構わねえが…
俺の生き方は真似すんじゃねえ…。
絶てぇ、後悔すっからよ…。」

俺はこの時…
総長の歩んできた人生の重みを
全く理解出来ていなかったから
総長のその言葉に納得は出来なかった。


「俺が思う強い奴ってのを教えてやろうか?」


俺は無言で頷いて総長の横顔を見た

総長は俺を一度横目で見て又もとに戻した。



「…先が読める奴と、
…大切な奴の為に命かけられる奴…」

「……先が読める?」

フッ…

総長は吹き出すように笑うと
また俺を弟か息子を見る目で
俺を見てきた…

「お前には仲間が居るだろ…
何時かは女も出来る…
更に言えば、餓鬼だって
出来るかも知れねえ…
だけどな、
俺やお前は裏社会で
生きてるって事忘れんじゃねえ
どんなに足掻いても、
喧嘩や争いは避けらんねえ…
だから、自分にとっての大切な奴を
本当に守りたければ、
それなりの行動を取るしかねえ
…今日のもそうだ…
お前はまだ男だ…だがもしお前が女や
餓鬼だったとしたら、
どんな酷い目に遭ってただろうよ。
守るのにプライドや
権力なんて必要ねえ
それを捨てるぐらいのつもりじゃねえと
人一人は守れねえよ…」




「…総長にはいるんすか…大切な奴…」





「ああ…命に代えてでも、
守りてえ奴がな」



俺には無理だ…

死ぬのが怖え




他人の為に命張れるなんて、
そんな事……俺には…


やっぱ、敵わねえよ…この人には…


「お前…勘違いすんじゃねえよ…」


総長はもう1本煙草に火をつけて
吸い始めた…


「え…」

「大切な奴の為に死ぬのが
強えんじゃなくて…
大切な奴を護るために最後まで
盾になれる奴が本当に強えんだよ…」


なんか…わかる気がした…

総長がこんなに強え理由


「やっぱカッケーわ、あんた…」


また俺の憧れの人が大きく見えた

「…お前もそう言われる男になれ。」





総長の背中を追いかけ続けて
何時か総長のように強え男になるまで
ずっと俺を見ててくれると思ってた…



だけど、
総長はやっぱ凄え人で…


族を引退した後
自分で仲間を集め
族を創りあげ…


総勢一万人以上の壮大で最強の
世界的に有名な暴走族の総長になった。



やっぱ総長は俺の誇りだった…
俺の一番の人生の先輩だった…














あの時までは……。








12月24日のクリスマスイブの日、

総長が作り上げた族の溜まり場
いわゆる創庫で何者かによる
放火が起こった。


クリスマスイブだから
創庫に集結した仲間5000人中4500人は
焼死で亡くなった。


総長が創った凄え勢力の族が
何でこんなにも人が
死ぬことになったか分かるか…?


美緒は俺の次の言葉を待ってるかのようにジッと黙っていた






「裏で操ってる奴等が居たって事だ…」






それしか考えらんねえ、

何故なら…
総長は一万人の奴等を
動かしてたんだぞ!!

たかが5000人を動かせねえはずがねえ

て言うかそんな逃げるための命令を
言われる前に動き出すだろ…
総長が選抜した凄え族の奴等なら





絶てぇ許さねえ!!
こんな風に汚え手使いやがった奴等をよ!!





まぁ、話はここで終わりじゃねんだ…




あの後、
総長は敵の奴等のアジトを見つけ出し
敵を打ちに仲間5500人を連れて
向かった。


だが…






戦いを終えて帰ってきたのは
たった50人の仲間で

その中には総長は居なかった…


後から聞いた話では
敵の勢力は大きすぎて総長側の力では
太刀打ちは出来なかった…

そして残りの50人の命を
助ける代わりに、
総長は自分自身の命を代償にして
助けたそうだ…



あれからどんなに
< 31 / 35 >

この作品をシェア

pagetop