【空色の未来[海色の過去]】
≪第13章 真実を知る者≫
美緒side


花火の日の翌日から
学校が再開した…。

どうやら、私はあの日気絶して
響也が送ってくれたんだって…


でも、それより

あの人の話題があがるなんて
不意を付かれたから驚いちゃった


もう響也達には関われないかもな
心臓が持たないや


本当弱いな…。



唇にまだ響也の感覚が親密に残っていてまるでついさっきされたみたいな感覚に
おかされている


花火大会楽しかったな…。




この頃
気が緩んでるせいか
響也にどんどん惹かれていく…

こんな事許されないのに。
心はもうとっくに悲鳴をあげてるんだね






「はよ」

「おはよ」



いつもと代わらず狼牙が珈琲を飲みながら新聞読んでる…


「狼牙…」

「ん」

新聞をわざわざ置き私の方に顔を向ける狼牙の髪を私は撫でた…

「餓鬼扱いか?」

「さあ」

嫌がる素振りはせずじっと目を瞑り
気持ち良さそうにしている


犬みたい…可愛い…


「なんか…あったか…」

私は左右に軽く首を揺らす

「そうか」

「学校に行く準備するね」

「ん」


私は狼牙のもとから離れようとした


パシッ

けどそれは叶わなかった
狼牙が私の手首を掴んだから

「なに」


「言え」


狼牙は鋭いからすぐ私の態度を見抜く








「あの事を…
忘れちゃいけないのに…
どんどん記憶から霞んで
いつの間にかあの頃の思い出さえも
消えて無くなっていきそうで
怖くて、怖くて…堪らない…

だけど…
彼奴がもう側に居ないなんて
認めたくないのに…
“時”はそれを許さない…

もう自分がどうすれば良いのか
分かんなくなっちゃった……。」





狼牙は私を一瞥すると刹那い顔で
そっぽを向き…もう一度私を見た…


「…こういうのはどうだ…

記憶や思いでは、一生消えることはねえ
ただ、心の奥にしまい込んで
何時でも好きな時に見れるように
なってんだって…
だから…忘れんじゃなくて
たまあにで良いから思い出してやれよ…

人は生きていく限り…
楽しい思い出も、辛え過去も…
増えてくんだから

今は、整理する時間だと
思えば良いんじゃねえの?」


狼牙の整った綺麗な顔は
朝日に照らされて更に綺麗に見えた…


狼牙は私に微笑むと
ポンポンと頭を撫でて

自分のソファに座り込み
新聞を読み始めた





これは狼牙の優しさであり
厳しさでもある

(自分の闇に深まりそうで
溺れそうになったら助けてやる…
だけど、
この先の答えは自分で導き出せ…)


狼牙は本当…優しすぎだよね…



逆に言えば、

私がどんな無茶な答えを出しても
支えになって守ってやる…って事じゃん


お人好し……


まぁ、どんな事が起きても
自分で何とかするから…関係無いけどね





そろそろ学校行くか…














何だろ……嫌な予感が…する………。







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