【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜


俺が嫌がることを。

俺が傷つくことを。

俺が怒ることを。



全部分かっている上でやってるんだ。



もう...俺の元に未菜はいない。

なのに...これ以上俺になんの用があるっていうんだ。



「ふふ。何の用だって言いたげな顔ですね」



「当たり前だろ」



「先輩は、自分の立場をご存知で?」



「は?」



立場ってなんだよ。



アイツは不気味に微笑んだあと、鋭い目つきで俺を見た。



「自分が、彼女を傷つける存在だと言う事を」



その言葉に俺はなにも言い返せなかった。



「先輩はやっぱり...なにも分かっていないですね。いつも自分を守ることで精一杯、一件相手を思いやってるように見えるけど、ただ単にそれは自分が酷く傷つかないためにすぎない」



「......そんなこと...ない...」



全てアイツの言う通りになるのは死んでも嫌で、だから形だけでも否定の言葉を発する。

だけど...そんなの無意味だった。

なんせ、俺の中にはアイツの話を否定するほどの材料がなかったから。



「先輩のせいで、未菜は苦しんだ。先輩のせいで、未菜は傷ついた。先輩のせいで、未菜は記憶を無くした」



やめろ...やめろ、やめろ、やめろ!!!!!



「未菜にとって先輩は、害でしかない。」

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