彼は藤娘
奈津菜は、逆に、奈津花ちゃん可愛さに自分の子は産まないと決めていた。
結婚して3年後、佐野の悪い病気が再発し、佐野は同業者の奥さんと駆け落ちした。
奈津菜の姑、つまり佐野の実母は、実子の佐野より嫁の奈津菜と孫の奈津花ちゃんを選んだ。
佐野と奈津菜は離婚したが、奈津菜と奈津花ちゃんは呉服屋で仲良く幸せそうだった。

……姑の死後、駆け落ち相手に愛想を尽かされた佐野が帰って来たけど、元サヤとはいかないだろう。
とりあえずは、行き場のない佐野を奈津菜は離れの隠居部屋に住まわせている。
ヒモというより、ペットを飼ってる気分だそうだ。


燈子ちゃんもまた、ニューヨークで雄々しく生きている。
テオさんは振付家としても指導者としても演出家としても優秀だったが、経営能力はなかった。
任せてた事務職責任者に大金を持ち逃げされ、テオさんの夢の城であるダンススクールは倒産した。
借金返済まで燈子ちゃんとは一旦離婚したが、地道にテオさんが振付で稼いで完済するとまた復縁した。

ちなみに2人に子供が生まれたのは、結婚して6年後、ちょうどテオさんが借金を背負ってどん底の頃だった。



「ふ~ん。みんな、がんばってるんだねえ。しかし波瀾万丈?……去年うちの学校の同窓会に参加したけど、みんなもっと普通に落ち着いて主婦なり奥様なりしてたよ?あきらけいこ達は、相変わらず個性的だねえ。」
フランスから里帰り中のセルジュに近況報告すると、昔からは考えられない柔らかい瞳でそう言われた。

「……そうかもね。うちも何年か前に同窓会あったけど、全体の半数が離婚か未婚やったわ。」
私がそう言うと、義人くんがワインに咽せて咳き込んだ。

「それはすごいな。……希和をやらんでよかったわ。彩乃もあきちゃんに愛想つかされんようにな。」

彩乃くんが少しムッとした顔で私の肩を抱き寄せた。
「放すつもりはない。死んでも。」

……40歳になっても相変わらずな彩乃くんに、セルジュと義人くんは笑顔になった。

少し恥ずかしかったけど、私は彩乃くんの腕の中で2人に言った。
「でも、みんな一生懸命、生きてる。未婚でも離婚でも、子供がいてもいなくても。私は誇りに思ってるで。せやしうちの菊乃も通わせてるねんもん。どんな状況でも自分で幸せをつかみ取って欲しいから。……ね?」

最後は彩乃くんに笑顔を向けた。

彩乃くんは父親の顔になって、ぼやいた。
「……複雑。咲弥はかまへんけど、菊乃には露ほども苦労させたくないわ。


セルジュと義人くんが弾けるように笑う。

2人につられて、私も夫の親馬鹿っぷりに吹き出した。



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