キミに捧ぐ愛
「ユメ、ここは?」
腕を引かれて振り返ると、眉を寄せて小難しそうな表情を浮かべる辰巳君の姿。
あれから『お前』ではなく、ちゃんと名前で呼んでくれてる。
そういうところはしっかりしているらしい。
「え?あー、えっと。そこはね」
真剣に問題集を見つめる辰巳君。
説明しやすいように辰巳君の隣に座り、白紙の余白にシャーペンで書き込んだ。
「この公式を代入するの」
「ふーん」
あまりにも距離が近かったせいか、辰巳君の相槌がすぐそばで聞こえた。
真剣に聞いているのかと思ってチラッと目をやれば、そこには相変わらずの無表情。
機嫌が悪いわけじゃなくて、きっとこれが普段の彼なんだろう。
一緒にいる内にそれがわかった。
「どう?わかった?」
「んー、何となく」