嘘と本音と建前と。
「おま、こんなクソあちーのに缶コーヒーかよ。馬鹿じゃねえの。」


田中とまではいかないがそこそこの大きい声で話す先輩がいるようだ。


聞きたくもない会話だが自然と耳に入ってきた。


「いや普段はかわねーよ。さっきこれ買ってた女の子がうまそうに

飲んでたから」


「缶コーヒーなんてみんな一緒だろ。」


それは断じて違う、と心の中で指摘する。


「甘さとかあるんじゃね?でもこれ結構うまい。」


豆の違い、煎り方にも違いがあることを知らないなんて

舌がついてないも同然だと司は顔すら見ていない先輩を卑下する。


缶コーヒーで同じ味がするものなんてひとつもない。


さして興味もなかった会話に熱が入り出した。


「なんだこれ。ジェージア?」


ジョージアな。


「ヨーロピアン、熟成ブレンドだって。」


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