嘘と本音と建前と。

田中の発する罵倒を聞けるほど精神的に現在安定していない司は友達の空知廉の腕を掴み立ち上がった。


「田中さん」


司の声を聞き振り返った田中の顔はメデューサのまさにそれだった。


「なに？」


低く、後ろに男でもいるのではないかと思わせる声に空知はひぃっと後ずさる。


司は何でもないような顔で空知を指さし「こいつと図書室行っていい？」と聞いた。


司の発言に教室中がざわつく。


肝心の田中は司を睨みつけ「サボる気？」とさっきと同じ威圧感を放つ。


「まさか。横断幕に使う資料を見に行くだけだよ。」


司はとぼけたような顔で笑った。


「わかった。でも空知は関係ないよね、藤堂くん」


今日はいつもより突っ込んでくる田中に腹が煮えくり返りそうになる司だが顔に出すほど馬鹿でない。


「いや、絵をかくのは空知だから」