奏で桜
〝コレ〟にもはや反撃する力
はなかった。

だらしなく尿を垂れ流し、
涙を流し、苦悶の表情を浮かべながら

〝たしゅけて…たしゅけて…〟

と繰り返す。


見るに堪えない光景だった。
私にはこれ以上見ることが
出来なかった。


だからすぐにでも目を閉じようとした。


しかし、神様は私が目を閉じることを
拒否したんだ。

…なぜなら、瞬間…、











…彼《アルト》が彼女《ティアナ》
の頬に鋭い平手打ちをしたからだ。









〝コレ〟が崩れ落ち、
一塊の破裂音が木霊する。

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