奏で桜
お嬢様とは色々なことがあったが、
良い意味でも、悪い意味でも、
あれほど心に響いた言葉は
なかったと思える。


彼女の予想外の反撃に、僕はその通り
だと〝納得〟しざるを得なかった。


なぜ、納得したかというと、
僕にとってそれが、前々から
心の片隅で抱いていたことだった
からだ。


しかし何処かで僕は〝あの人〟とは
違う、と否定する自分もいた。

だからこそ心の片隅に
追いやっていたのだ。



そして言われて初めてそれは
浮き彫りとなり、改めて
気づかされる、というわけだ。




現在、お嬢様は陽彩さんのもとで
暮らしている。

あれから僕とは一度も
顔を合わせてはいない。

どうやら陽彩さん曰く、
彼女は僕とはもう会いたくないらしい。

だから、ほとぼりが冷めるまで
うちで預からせて貰いたい
と陽彩さんの方から提案されたのだ。
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