奏で桜

3

ーここはあいつの眠る病室の外。

私は座り心地の良くないしんと冷えた
椅子の上で、ひとり腰掛けていた。










ー私達はこの病院という白い建物から
連絡を受けた。そしてすぐ駆けつけ、
その光景に目を疑ってしまうこととなる。

なぜなら、いつも不器用ながらも
にこりと笑うあいつが息を荒くし、
見るからに熱そうなほど、
顔を真っ赤に染め上げていたからだ。

ここまで弱々しい姿は屋敷でさえ
見たことがない。

というより、ひょっとすると
病気になったことすらないんじゃないかと
思えるほど丈夫だったんだ。

そんなあいつが今、目の前で苦しみ
悶えている。


だから焦るというよりも
本当に信じられずにいたんだ。
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