奏で桜
「ご家族の方ですか?」



「…いえ、私はこの子のただの付き添いです。
なので、詳しい話はこの子に…。」





トントンっと、肩をつつかれ、振り向くと
そこには体型が痩せ衰えた、
どこにでもいそうな中年男が立っていた。

丸い眼鏡をかけ、白衣を着ているのですぐに
医師だとわかる。


「ご家族の方、少し宜しいですか?」


「…。」





私は何も答えなかった。
無視をしているわけではない。
気分的に答えたくなかったんだ。

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