奏で桜
「心身ともにひどい容態です。
元々、発熱しておりまして、
ここに運ばれてからも熱は上昇していき、
現在では39.5度を超えてしまっています。
このままでは生命に関わることと
なるでしょう。
原因としてはおそらく極度の過労とストレスに
よるものだと思われます。

…私が仰ることではありませんが、
こうなる前に彼を止めることは
出来なかったんですか?」


そんな私を気にもせず、医師は
的確に明確な説明をする。

最後にとってつけたような言葉は
明らかに悪意のあるようだったが
私の心にはさほど響かずにいた。


だから私は依然として、無視をし続ける。

それで医師が何を思ったのかは知らない。
しかし彼は確かに〝まあ、いいでしょう〟
と溜息を吐いた。


殻を破ったのは次の質問だ。






「ところでお聞きしたいんですが、
彼個人の診察券はありますか?」
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