奏で桜
「…やった。やったあ!
ついにあの窮屈な屋敷を抜け出せたわ!
これでやっと私たち自由になれるのね!

ふふ…どんなことをしようかしら。
〝外の世界〟に出ること
なんて初めてだから
つい心が踊っちゃうわね。
…よし、決めた!!
先ずは、街に行きましょう!
街に行って色々なお店を
見てみたいわ!
それで、それから…」


お嬢様がそこまで言いかけたところで
今度は若い執事が言葉を静止させた。



「お嬢様…大変ご機嫌がよろしいところ
水を差すようで申し訳ないのですが、
僕たちが追われている身だということを
重々、お忘れないように
お願いしますね。」


若い執事は何時もよりも真剣な表情で
淡々と話した。



「…言われなくてもわかってるわよ
そんなことくらい。

…いいでしょう?
少しくらい浮かれても。
何しろ〝外の世界〟に来ること
自体初めてなんだもん…。」
< 4 / 169 >

この作品をシェア

pagetop